遠野)ざっくりした質問ですが、タカラジェンヌになれる人ってどういう人だと思いますか?
上級生、同期、下級生をみて、どんな人が合格しているのか、共通点はあるかな?
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白華)率直にいえば、可能性がある人です。いろんな意味でまっすぐに進める人かな。
蒼乃)とにかく根性がないとだめです。
例え、背が低かろうが、顔が大きかろうが、容姿や外見ではなく、気持が大切です。
受験の面接官は、そこを見ている。受験の会場で、「この子は他の受験生とは違う」と
思わせることができないといけない。
それが可能性につながっていく。
宝塚に入りたいという強い気持ちが重要だと思います。
遠野)たまに、入る気がなくて、「入っちゃいました」みたいな人がいますが。
蒼乃)個人差はあっても、そういう人は入ってから苦労していますね。
遠野)合格する人のなかには、幼いころから教室に通っていて完璧にこなす人もいれば、
一方で歌も踊りも全然できない人もいますよね。
蒼乃)どちらかといえば、受験生の段階で出来上がっている子よりも、
伸びしろがある子の方が良しとされる傾向にある気がします。
この子は将来、大化けする、伸びるという可能性があるかどうかを見ているのだと思います。
白華)そうですね。あと、受験の初回は、わざと落として、翌年にどこまで成長して
いるかを見極めるというケースもある。そのなかで、特に印象が強い子を残すわけです。
遠野)それよくあるよね。
面接官が意外と、昨年の受験生を覚えていることがあるよ。
2回目の受験のときに、面接官から「前回の踊りはだめだったけど、今回はどうでしたか」って
聞かれて、とても驚いた覚えがあります。
だから、1回目に不合格になったとしても、次のために自分の印象を残すことが大切です。
私の場合は、下手過ぎで、覚えられたのかなという節がありますが(笑)。
白華)私も2回受験しましたが、落ちたことで、気持ちがより一層強くなった。
だから、たとえ試験途中で失敗した部分があっても、頑張り抜けた気がします。
蒼乃)私、れみさんのこと覚えていますよ。
私は4回受けてますからね(笑)。
同じ試験を受けたときに、こういう人が合格するんだと思いましたよ。
こういう人が娘役になるんだって納得しましたし。本当にフランス人形みたいでした。
白華)私、ゴボウみたいで、真っ黒じゃなかった?(笑)。
夕妃のことも覚えてるよ。本科生のときに夕妃が試験を受けているのを見て、インパクトが強く
て、すごい派手な子だって印象が強く残っている。
不思議なもので、何となく覚えている子は、その年にだめだったとしても、次の年に
入学していました。
蒼乃)そうなんですよね(笑)。
遠野)私も2回目で合格して、1回目に印象に残ってた子はたちが受かるか、次の年に
同期になったりしたなあ。
受かる人は何か印象を与えられるんだね。
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蒼乃)あと、宝塚は合格ラインがない試験ですから、これをやっていればとか、
何点以上というものがないし、見えない。
自分自身で切磋琢磨し、日々精進していくしかないと思います。
遠野)うん。
でも試験のシステムが以前と変わって、1次が面接試験になったから、面接に通過しないと、
実技を見てもらえないシステムじゃない?
だから、1年間一生懸命やっても、見てもらえない可能性がある。
私の友人の娘さんは、せっかく頑張っても見てさえもらえないかもしれないから、レッスンに
張り合い感じないことがあるって悩んでたよ。
それについてはどう思う?
蒼乃)そんなこと考えてたら受験なんてする意味ないんじゃないかなあ。
白華)結局できるところまでやったという実感が自信につながるから、レッスンに
意味がないことなんてないよね。
遠野)受験内容はどうだった?
蒼乃)私のときは、受験科目数が多くて、はじめてリズムダンスが導入された年でした。
白華)そうそう。
何かよく分からないまま終わってしまって、面接のときに、
案の定突っ込まれたりしましたね(笑)。
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蒼乃)本科生の時に、面接の試験のお手伝いに入らせてもらって、面接官の先生が
どこを重視して見ているのか、よくわかりました。
そのときは、30秒のフリーダンスが科目としてあったのですが、多くの受験生たちは
自分の特技をそれぞれ披露するわけですよ。
30秒間フェッテをずっと回っている子や、とりあえず前に出て必死にアピールする子が
いました。
でも終わってその子が教室を出たとき、面接官の先生が、
「前に出て踊ればいいっていうわけではないのにね」と言ってたんです!
遠野、白華)(笑)。
蒼乃)バレエの技術はバレエの試験ですでに見ている。
それよりも、その試験では、適切にリズムや音がとれているか、曲をきちんと
聞けているかというのが評価の対象だったわけです。
白華)なるほど。
それを聞いて、私が試験を受けた時しどろもどろで何もできなくて、それを試験官に
突っ込まれてリズムをとらされたのを今思い出しました(笑)。
蒼乃)私はバレエをやれといわれても、できない。
だから曲に合わせて体を動かすしかなかった。求められていることに、
純粋にやればいいということだと思います。
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白華)設定された課題の正しい方向にまっすぐ向かっているのか、向かっていないのかが
問われていますね。
遠野)私の時は、面接で詩の朗読があったの。
10人くらい一斉に会場に入って、1人ずつやらされるわけ。
誰も準備していなくて、まさに抜き打ち試験だった。
途中で朗読に詰まる人もいた。やたら大げさな人も。
でもその一方で、自然に抑揚をつけるセンスのいい人もいて、演劇のセンスや
加減のバランス感覚がはっきり見える試験でしたね。
蒼乃)そういった時こそ、本来の姿が垣間見えますからね。
結局のところ、今の受験システムであれば、実技試験で技術を見てもらえない可能性が
あるわけですから、まずは、レッスンを通して培った内面や、キャラクターを打ち出せるかが
重要じゃありませんか?
遠野)表面的な形だけを覚えても、面接官はそれを見たいわけではない。
本人の内面の良さを、話し方、たたずまいに出すことが大切だよね。
もし私が面接官であれば、まずはそれぞれのパーソナリティを見たいと思いますから。
蒼乃)きちんとレッスンを積み重ねてきた子は話せばわかりますからね。
白華)試験で、歌や踊りを失敗したとしても、面接を通して見えてくる人間性が重要で、
そこから努力するかがどうかが評価されているのでは。